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酸性温泉

草津温泉 冬の朝 8時15分 [草津温泉]

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日本画家、奥村土牛(とぎゅう)の「門」という絵がある。
姫路城にある、しごく目立たない「はノ門」を描いた絵だ。
なぜそんな場所を絵の題材に選んだのか。

誰にも返り見られない暗い門は、
夏、午後の日差しが差し込むと、
石畳みの照り返しで門の木目や木肌を浮かび上がらせる。
その古い木の肌あいが、古さ、つまり城の歴史を語る。

土牛は、その時そこにいなければ描けない一瞬を絵にしたのだ。
温泉地にもしばし、そんな瞬刻がある。

草津温泉。よく晴れた冬の朝。8時すぎ。
素晴らしい光景に出会える。

湯畑の脇に立つ共同浴場。白旗の湯。
その男湯に、
その瞬間入るのが好きだ。

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女性読者には申し訳ないが、これは男湯の話だ。
しかも、もし男だとしても、
草津の共同浴場の中でも上位と言われる高温泉に入れなければ、
それを見ることは叶わない。

白旗の湯には、ぬる湯とあつ湯、ふたつの湯槽がある。
ぬる湯とは言え、44度から46度ほど。
あつ湯は、ぬるいときは46度ほどのこともあるが、
たいがいは47度前後。
日よっては49度に近づくことすらある。

そのあつ湯から見た光景が素晴らしい。

草津の冬は氷点下になる。
白旗の湯は、もうもうと立ちこめる湯気で、湯屋のなかが真っ白ににごる。

その時、あつ湯の湯船に身を滑りこます。
四角い湯船の四隅のうち、一番奥の角に背を預け、寄りかかるようにして座る。
熱さがジリッと身を刺す。

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顔を上げると、そこから湯小屋の中全体が見渡せる。
ここが、この風呂場の特等席だ。

湯けむりに霞む先には、ぬる湯を囲むように立つ柱が、黒々とそそり立つ。
そこへ二条の光が黒い柱を斜めに交差する。

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光の正体は太陽だ。
脱衣所の開いた窓から射し込んでくる。
縦に立つ黒い柱と、斜めに射す陽光が、湯けむりに霞む湯屋を幻想的に貫く。

冬、この時間でなければ、
しかもあつ湯に入れる者だけが見られる、
ちょっと特別な光景。

これが楽しみで、
冬の朝は白旗の湯と決めている。

かくいう自分も、
48度弱までならなんとかいけるが、
それを超えると、もう灼熱で入れない。

こんな時と場所に出会うには、同じ風呂に何度も入り、
季節や時間のさまざまな違いを知らねばならない。
運も必要だ。
それでも、もちろん、白幡の湯で見たような光景に、
ほかの湯船で出会える保障はない。

特別な光景に巡り合える風呂を知っていることを、
ちょっとばかり幸せに思う。

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このブログでは、可能な限り写真で紹介しているが、
今回撮影はなし。
写真を撮るにはカメラを持って湯に浸からねばならず、
強酸性の湯気でレンズも曇る。

それにきっと写真では、その感動は何分の一でしかないだろう。
そこまでして撮影するより、湯につかって眺めていたほうがいい。

だから、それを見たいなら、
その時間、そこへ行って、晴れることを祈れ。


2017年 冬

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