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酸性温泉

暮らすように過ごす 酸ヶ湯 [温泉地レポート 酸ヶ湯]

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青森駅からの送迎バスで、八甲田山中のくねった道を進むこと小一時間。山裾から、突如現れる一軒宿は、思いのほか大きい。玄関をくぐると、歴史の刻まれた広いロビーに、酸性硫黄泉特有の香りが立ち込める。
「また来たなぁ」。しみじみ思う瞬間だ。

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荷物を解く間も惜しみ、そそくさと浴衣に着替えると、長い廊下を抜けて風呂へ向かう。
男女別の玉の湯と混浴のヒバ千人風呂がある。玉の湯は湯船がひとつ、千人風呂は大きな湯船が二つに打たせ湯を擁するが、どれもpH2.0前後の強酸性。泉質は複数ある源泉により微妙に違うが、おおむね硫黄を含む成分豊富なにごり湯だ。

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女性が最初に向かうなら、シャンプーや石鹸を備える玉の湯がいいだろう。男性客なら、酸性泉を頭からかぶればこと足りるので、そのまま千人風呂へ向かう。

ヒバ千人風呂は、その名のとおり160畳もある巨大な室内空間に、広い湯船が二つ用意されている。
湯小屋は青森を原産とする総ヒバ造り。ヒノキ科のヒバの木は耐水性・抗菌性にすぐれ、家屋はもちろん、風呂桶にも使われる木材で、香りがいい。脱衣所から風呂場に踏み込むと、清涼なヒバの香りがほのかにする。
これが、青森の匂いだ。

風呂場で、まずはじめに向かうのが、冷(ひえ)の湯。そのぬるめの湯でかけ湯をする。ここだけが透明なので、温泉ではないと思う人もいるようだ。

ふたつある湯船へ身を沈めるのだが、熱(ねつ)の湯も四分六分(しぶろくぶ)の湯も、それぞれ個性が強く、誰にでも違いが分かる湯だ。

手前にある熱の湯は42度ほど。じっくりと浸かるのが、熱の湯の入り方。実は、ここだけが足元湧出となる。注意深く見ていると、ふくりふくりと、そこかしこから気泡が立ち上る。白濁した湯の底は、すのこ状に板が敷かれ、その隙間から泡が昇って来るのだが、隙間に指を当てると、じわりと熱い。
その上に陣取るのが熱の湯流。

いっぽう、奥にある巨大な四分六分の湯は、湯口から大量の湯が注ぎこまれる44度から45度ほどの熱めの湯。色は濃い白濁で、口に含むと酸性硫黄泉らしいえぐ味がある。その濃密な湯は、急速に身体に効く。3分入れば、汗が噴き出る濃厚泉だ。

一番奥にある湯瀧は、四本の打たせ湯で、湯治客に人気がある。体の痛い所に当てる人も多いが、実は足の裏に当てるのが酸ヶ湯式。湯あみ着を着ていない女性には行きづらい場所なので、女性専用時間に利用する人が多い。

「滝湯を頭からかぶったらさ、シャンプーなんかいらねはんでにぇ」
常連客のおじさんが教えてくれた、酸性泉の智恵。

見事に白濁した湯は、夜ともなると色を変える。
落ち着いた暗さに映える湯は、暗緑の浅田飴色。そこに黄金の灯りが、ゆらゆら揺れる牡丹のように照り映える。暗い緑に揺れる金。その様をぼんやりと眺めつつ湯に浸る。
時間を忘れるひと時だ。

見上げれば、ヒバで組まれた広大な天井が圧倒的。広い湯小屋に、視界を遮る柱が一本もない。その造りは、ノアの箱舟を想起する。キリンが首を伸ばせるほど、頭上は高い。

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とりわけ、冬になると行きたくなるのが酸ヶ湯だ。雪に閉ざされ、外に出ることもなく、旅館の中だけで、暮らすように過ごす。
敷きっぱなしの蒲団の上で小説を読み、中身のない昼のテレビ番組に目をやり、風呂で疲れたら惰眠をむさぼる。ときたま、長くノスタルジックな廊下を、あてどなく散策する。外は日本有数の豪雪地帯。猛烈に吹雪くことも、しばし。
そこで何もしない、という贅沢。

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※浴室内は撮影禁止のため、同館ホームページより使用


酸ヶ湯温泉
青森県青森市荒川南荒川山国有林酸湯沢50番地
TEL 017-738-6400