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酸性温泉

霧島温泉郷 新湯温泉・新燃荘 [温泉地レポート 九州]

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今からちょうど1年前の2016年秋。鹿児島県の霧島山中にある、国民宿舎「新燃荘」へ行くことにした。九州屈指の湯とうたわれる白濁硫黄泉で知られる宿だ。

旅に出る数日前、ヤフーの地図で周辺地域を確かめていたときのこと。地図を写真画像にきりかえると、豊かな緑に覆われた噴火口が幾つもあった。それが霧島火山群だ。

さらによく見ようと写真の倍率を上げたとき、山が灰色になった。高高度からの撮影と、低い高度での撮影時期が違うからだ。緑豊かな霧島の画像は2011年以前のも。灰色になったそれは2011年1月、新燃岳が噴火した際、降り積もった火山灰が山を変させた以降のもの。火口から立ちのぼる、白い煙すら写っている。

火山と温泉。切っても切れないその関係は、温泉好きに恩恵を施し、ときには住民たちに厄災を引き起こす。それまで新燃岳には、美しいエメラルドグリーンの火口湖があったそうだが、今はかさぶたのような溶岩でふさがれている。

そんな新燃岳の火口から2キロほど。山あいにある一軒宿が新湯温泉、新燃荘。民間の国民宿舎だ。

鹿児島空港から路線バスで40分ほどのところにある停留所。新燃荘の元気のいい女性スタッフが、クルマで迎えに来てくれた。そこからは上り坂。やがて林道に入ると、途中、開けた場所にでる。女性はスピードを緩め、あれが5年前に噴火した新燃岳です、と指をさす。すっかり灰に覆われた、荒涼とした山体が2キロ先に見えていた。

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宿に着くと、そこは木造二階建てのひなびた旅館。壁には、国民宿舎新燃荘という大きな看板がかかっている。はじめこの悪目立ちする看板を見たときは、違和感まじりの驚きを覚えたものだが、見慣れてくると味になる。建物は山あいの一軒宿らしい風情を醸す。

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駐車場から橋を渡ると旅館棟が右にあり、左の階段を下りると湯小屋と露天風呂になる。風呂は旅館棟に、男女別の内湯、家族風呂がふたつ、そして女性用露天風呂がある。いっぽう外の湯小屋には、男女別の内湯、男女別の治療泉を構え、その目の前に大きな混浴露天風呂がある。残念ながら、風呂は撮影禁止になっている。

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火山性ガスの影響で、入浴は1回30分以内と決められている。風呂場に必ず時計があるのはそのためだ。そして新燃岳の噴火に備え、避難場所の説明もある。

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露天風呂の手前に内湯の湯小屋があって、中にはいると棚に十数人分の籠を並べた更衣室。内湯の湯船はそこそこ広く、洗い場は狭い。入口とは別の場所に出入り口があって、そこから混浴露天風呂へ向かう。

女性には混浴露天風呂で使えるタオルが用意されていて、身体に巻いて入ることができるので、初心者でも行きやすい。

広い露天風呂に身を沈めると、大量の湯の花でとろりと白濁した湯。温度は41度から42度ほど。人気の秘訣は、真っ白な濁り湯にひなびた湯小屋が建つ非日常の景観。どこか乳頭温泉の鶴の湯を思わせる。

肩まで湯につかると、ついつい溜息まじりに、しみるなぁ、と、いっぱしな言葉が口をつく。素晴らしい湯だ。さざ波のたつ白い湯面をぼんやり眺めてすごした。

さらに、湯小屋の一番奥に男女別の治療泉がある。これは湯治場としての風情を今も色濃く残している。ただし入浴は皮膚疾患のある人のみ。乾燥肌やアトピー、水虫などの症状があるなら入浴可能。専用の脱衣所があるので、服を着たまま風呂場まで行ける。

小さめの湯船には、高さ2メートルほどの石の壁を伝って湯が流れ込む仕組み。温度は44度から45度ほど。いっぽう湯小屋の木の壁は、床の低さの窓があり、開きっぱなしになっている。これはガス対策なのだろう。涼しい風が入ってくるので、火照った身体を冷ますにはうってつけ。治療泉というだけあって、他とくらべて湯がいいと感じるのは、思い過ではないようだ。

でも見落としてはいけないのが、旅館棟にある内湯。泊り客と「休憩」料金を支払った立ち寄り客だけが利用可能。

男女別の内湯は、それぞれ3人ほどがはいれる湯船がある。治療泉と同じく高い石の壁をつたって湯が流れ落ちる仕掛け。その石壁に、白い湯花がびっしりと付着する。湯の温度は45度ほど。グッと身体に来るものがある極上泉だ。

このほか館内には、ふたつの家族風呂と、混浴が苦手という人のために、女性用露天風呂が設けてある。

いっぽう、泊って驚かされるのが料理だ。国民宿舎ということもあって宿泊料も手ごろ。だから料理にはまったく期待していなかったのだが、シンプルな食材ながら、素材にあった味付けは絶品。食堂の席につくと、小皿料理が数種類用意されているほか、温かい料理がその都度運ばれてくる。

薩摩らしく、地鶏の刺身も出た。しかも数種類の部位が皿にのり、それぞれ味を楽しめる。ほかには川魚の塩焼きや黒豚肉の角煮、ピーナッツのソースで食べる天ぷらなど、意外性のある味付けも。下手な老舗旅館よりも、よっぽど味がいい。ほかの宿泊客と話をすると、みな必ず料理をほめる。聞けば宿の長男が腕を振るっているとのこと。

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そしてこの宿の特徴は、白濁露天風呂を求める立ち寄り客が多いことだ。休日なら1日200人。ハイシーズンともなると500人にものぼるという。時間は朝8時から夜8時まで。宿泊した翌朝も、8時過ぎには最初の客がやってきた。この入湯料が、谷あいのひなびた旅館を支え、ひいては宿泊客に供される味わい深い料理に反映されているのだろう

どんなにいい湯をもってしても、廃業せざるをえない旅館が数多くあるだけに、立ち寄り客を受け入れることで、宿泊客にも宿にも、幸せをもたらしてくれる。

宿は十部屋。ちょっと季節を外したウイークデーなら、宿泊客も数組。入浴時間が30分と限られることもあり、逆に広い露天風呂を独占できることもままあった。

今、まさに噴火している新燃岳を筆頭に、火山群ひしめく霧島温泉郷には上質の湯が多い。

近くには、これも霧島の極上泉として知られる湯の谷山荘(16年11月に紹介)がある。お勧めは、それぞれ両方に一泊づつすること。どちらの風呂がいいかは、自分で直接確かめてもらいたい。

だから新燃岳の噴火も収まり、一日も早い宿の再開を望む。
絶対にまた行きたい。






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